インド進出にあたり、どの場所にオフィス・工場を構えるか?

The rise new suburbs connecting Indian City Centers: Goregaon East Mumbai by Amit Chivilkar on Unsplash.com. Goregaon is a newly developed suburb of Mumbai city, in the Mumbai Suburban district of India. It has a railway station on the Mumbai suburban railway on the Western Line, connecting to Mumbai`s business center.

インドの主要な都市という場合、まず挙げられるのは、デリー、グルガオン、ムンバイ、バンガロール、チェンナイです。これらの都市には企業の本社または支社があり、公共交通機関で産業センターや製造ハブに接続されています。その次の規模の都市として、プネ、ハイデラバード、インドール、アーメダバード・バドダラ、ラジャスターン州のニムラナなどがあります。インドのビジネスに携わる方なら、これらの都市に行ったことがあるのではないかと思います。

ビジネスを行う場合、しかるべき場所にいる必要があります。よって、なぜその企業がインドでその場所にオフィスや工場を作ったのかを調べることは大切です。インドの商業不動産価格は高く、一方で都市は拡大しています。ビジネスに最も適した場所はどこなのか業種ごとに見てみましょう。

業種別インドで進出するべき都市の整理

この一覧表は業種ごとにオフィスや工場を作るべき場所を整理したものです。企業の国籍は関係なく、一般論として見てください。日本の企業やその投資先、日本人駐在員の視点で見ても、結果はほぼ同じになると思います。

日本企業からみて、インドのように人々の均質性が低く、文化がまったく異なるところへの進出はとても大変です。言語だけではなく、日常生活やライフスタイルの問題となるからです。一方、進出にあたっては、企業の視点と従業員の方やそのご家族の視点があると思います。

企業にとってインドへの進出にあたり、場所を決めるのは難しい決断だと思います。他社の事例や経験から学んだり、新たに開発された場所を調べてみることも大切です。貴社の事業領域、サプライヤーへのアクセス、物資を移動するためのロジスティクス、航空および鉄道システムによる近接接続、道路状況、およびインフラはすべて非常に重要なポイントです。

従業員にとってもインドへの異動は容易なことではありません。まず、どこに日本人が多く住んでいるかを知りたいでしょう。近くに日本人がいたほうが安心でしょう。日本人会や日本人コミュニティがあるかどうかは安心感につながります。

以下に、日本のビジネスにとって重要と思われる主要な都市や地域についての背景を説明します。より詳しく、個別具体的にお知りになりたい場合は、お気軽に弊社へご連絡ください。

多国籍企業本部
政治に関する意思決定者へのアクセスという点からグルガオンとニューデリーは多国籍企業と本部のハブになっています。グルガオンはニューデリーの近くです。

金融
とにかくムンバイです。ボンベイ証券取引所(BSE)、強力な地元企業の本社、メディアとエンターテインメントの中心地、人口の多さ。これらの点から、ムンバイは金融および貿易活動の最優先の場所となっています。港へのアクセスとグローバルな環境という点で、ムンバイはニューヨークや上海の町のイメージに近いといえます。

通信
通信事業者はネットワークや通信に関するライセンスや所有権という点で、政府との緊密な関係が求められています。グルガオンはインドの多国籍のハブとして機能しています。

自動車・自動車関連サプライヤー
自動車および自動車部品は、日本とインドの協業が最も進んだ分野です。日系自動車メーカーのほとんどはグルガオンとその周辺地域で事業を開始しました。スズキ、ホンダ、ヒーローモトコープ(Hero Motocorp)、HMSI(ホンダスクーターアンドモーターサイクル)といったマーケットリーダーは、すべてグルガオンとデリーを拠点としています。

トヨタは、キルロスカーグループ (Kirloskar Group)と長年の関係があるため、バンガロールを拠点としています。キルロスカーとKOEL(Kirloskar Oil Engines Ltd)はプネを拠点とするエンジニアリング会社ですが、自動車関係はバンガロールを拠点としています。トヨタはバンガロール郊外のビダディ(Bidadi)に工場があります。

一方、ドイツ系の自動車メーカーはプネを拠点にしています。プネには、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、インドのバジャジオート(Bajaj Auto)、タタ・モータース(Tata Motors)があります。

チェンナイは南部の強力な拠点です。チェンナイにはTVSモーター(TVS Motor)や現代自動車があり、BMWの最初の組立工場もチェンナイの郊外に設立されました。

グジャラート州は日本企業にとって重要性を増しているものの、ハリヤナ州とタミルナードゥ州が主要な地域です。

工作機械・アクセサリーサプライヤー
インドでの工作機械の中心地はバンガロールです。工作機械と鍛造機械の展示会は、主にバンガロールで開催されます。バンガロールを拠点とするのは、ファナック三菱とマキノ、インドの工作機械メーカーACE、自動旋削チェンジャーメーカーのPragati Automation、ロータリーテーブルメーカーのUCAM、 Kennametal India、Bharat Fritz Werner(BFW)です。

ヤマザキマザックと多くの自動化サプライヤーはプネに拠点を置いています。

切削工具
工具は摩耗するため、切削工具メーカーは頻繁な営業訪問が必要で、顧客の近くにいることが重要となります。そのため、工場や購買部門に近接している必要があり、グルガオン、バンガロール、チェンナイが重要な場所となります。

電気/電子機器
ほとんどの企業がデリー郊外にあります。ダイキンはニムラナに、パナソニックのインド本社はグルガオンにあります。また、パナソニックはグループの法人がいくつかあり、キッチン向け製品を扱うパナソニック・アプライアンスは、南インドのタミルナード州のチェンナイに拠点があります。

バンガロールには三菱電機とファナックの本社であり、工作機械やCNC(NCまたはコンピュータ数値制御盤)メーカーへのアクセスを確保しています。サムソン、LGなどほとんどの韓国企業がチェンナイ近郊で工場操業を開始したことを理解することが重要です。

ロボット工学・オートメーション
ロボット工学の場合、ほとんどの企業は、自動化技術または機械のメーカーがある場所を拠点にしています。ドイツのクカ(Kuka)や安川ロボティクスはプネを拠点としています。PARI Robotics、Finearc Systems Pvt Ltdといくつかのインドのオートメーション会社の拠点もあります。

楽天のサプライヤーでもある、ロボット自動化およびAI企業であるG​​rayOrange(インド)は、グルガオンを拠点としています。川崎重工業はデリー近郊のハリヤナ州を拠点としています。ファナックは、機械とNC制御の分野でインドで強い存在感を示しており、バンガロールを拠点としています。

ソフトウェア開発・テクノロジー・EC
インドのシリコンバレーはバンガロールで、ほとんどのテクノロジー企業が存在し、非常に強力なR&Dインフラストラクチャーとベンチャービジネスのエコシステムがあります。技術と研究開発の点から見ると、400ものR&Dセンターと85のチップ設計会社がバンガロールにあります。

次はハイデラバードです。ハイデラバードはバンガロールに代わる場所と見なされており、テクノロジー都市として、快適でバランスの取れた生活のランキングで高く評価されることがよくあります。

また、優れたエンジニアがいるため、プネがこの分野でも急速に存在感を示しています。高速道路でムンバイに簡単にアクセスできるプネには、老舗のエンジニアリング会社や自動車会社、そして多くの優れた大学があります。プネは、生活の質のランキングでもハイデラバードに次いで第2位です。

IT アウトソーシング・バックオフィス・コールセンター・ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
グルガオンは、アウトソーシング企業にとって世界最大のハブであり、この地域では50万人の新しい雇用が創出されています。インドは現在、世界のITアウトソーシング業界で50%以上のマーケットシェアがあります。

多くのIT企業がバンガロールに拠点を置いているため、バンガロールはグルガオンとほぼ同じくらい重要です。次にプネが続き、ハイデラバードがそれに続きます。

チェンナイも重要な場所ですが、南部の言葉のアクセントが強いです。この地域の人々は南部では上手な英語を話しますが、非常に速く話し、発音を英語で理解するのが難しいです。したがって、より多くのアクセントと発音を中和するトレーニングが必要になります。

広告・デジタルメディア・テレビ・映画・新聞
ムンバイは映画業界ではボリウッド(Bollywood:BombayとHollywoodの造語)と呼ばれ、多くの映画やテレビシリーズがムンバイで撮影されています。また、多くのインドのトップ企業やスポンサーが拠点を置く場所でもあり、インドのメディアにおける中心地です。ムンバイでの存在感は重要ですが、ニューデリーへのアクセスも同様に重要です。

ちなみに映画という点で南部の映画もそれぞれの地元では地位が確立しています。ハイデラバードのあるアンドラ・プラデシュ州のテルグ映画(Tollywood)、チェンナイのあるタミルナード州のタミル映画(Kollywood)、バンガロールのあるカルナタカ州のカンナダ映画(Sandalwood:地域の名産であるサンダルウッド(白檀)にかけています)があります。〇〇映画の〇〇の部分はこれらの地域で話されている言語の名前です。また、日本でも流行った「踊るマハラジャ」はタミル映画です。

日本で人気のあるボリウッド映画は 「3 Idiots」です(邦題「きっと、うまくいく」)。この映画は、アーミル・カーン、カリーナ・カプール、ボーマン・イラニが主演するコメディーです。ストーリーラインは、より良い未来のために夢見ている多くのプレッシャーに対処する若者の問題についてのものであるため、若い日本人学生にとっては親しみやすいものです。

医療機器・医薬品
インドは医療機器ではあまり知られていません。しかしながら、ジェネリック医薬品や医薬品原料において非常に強い市場です。ファイザー、エーザイ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、グラクソ・スミスクライン、メルク、ロシュはすべてムンバイまたはその周辺に拠点を置いています。インドの大手製薬会社であるサンファーマも、ムンバイのグルガオンを拠点としています。サンファーマは、第一三共からランバクシーの株式を取得した会社です。(サンファーマと第一三共についてはこちらもご覧ください)世界最大のジェネリックワクチンメーカーであるSerum Institute of India Pvt Ltdはプネを拠点としています。

バイオテクノロジー
アンドラ・プラデシュ州政府は、ハイデラバードのゲノムバレーでインド初のバイオクラスターを開始し、バイオテクノロジーのイノベーションと経済成長ための環境を整えました。
ゲノムバレーは、100を超えるバイオテクノロジー企業に世界レベルのインフラストラクチャーを提供するインド初の最先端のバイオクラスターです。 広さは600平方キロメートルで、インドの主要なバイオテクノロジー機関や企業とのバイオテクノロジー研究、トレーニング、コラボレーション、製造活動のために設立されました。インドのバイオテクノロジー企業の60%以上がバンガロールに拠点があり、カルナタカ州はインドのバイオテクノロジーセクターの総収益の50%を牽引しています。しかし、ハイデラバードは今、ますます重要になっています。

日用消費財
ヒンドゥスタン・ユニリーバ(Hindustan Unilever)とP&Gはいずれもムンバイを拠点としています。インドのメジャーな消費者ブランドであるゴドレジ(Godrej)もムンバイにあります。同じく人気のあるインドのブランドのダブール(Dabur)は、ニューデリー近郊のガジアバード(Ghaziabad)を拠点としています。ネスレはグルガオンを拠点としています。

パタンジャリ(Patanjali Ayurved )は、ニューデリーを拠点としています。 パタンジャリは、ババ・ラムデブ(Baba Ramdev)との関係により、突如として注目を集めたブランドです。 ババ・ラムデブは、アーユルヴェーダビジネスと農業の仕事で知られるヨガの第一人者です。

インドの大手スナックメーカーであるハルディラム(Haldiram`s)は、ニューデリー郊外のノイダを拠点としています。インドの有名なコングロマリットで消費者ブランドでもあるITCは、コルカタを拠点としています。コルカタは、外国の多国籍企業には一般的ではありません。

食品・食料品小売
この業界は、上記の主要な消費者ブランドと同様の本社トレンドに従います。食品や消費財と同様に、多くのブランドがニューデリーとその周辺地域を拠点としています。これはおそらく人口が多いためです。ムンバイも重要な中心地です。チェンナイは、食料品小売業の最初のテストパイロット都市でした。しかし、高い家賃と物流コストはそれを挑戦的な産業にします。ニューデリー、ムンバイ、グルガオンでは特に家賃が高い。 電子商取引もビジネスのやり方を変えています。リライアンスのJio、Amazon、Flipcart(Wallmart)がこの分野をリードします。

消費者小売・ファッション・アパレル
消費者向けのブランドと同様に、ほとんどのファッションおよびアパレルブランドはニューデリーとムンバイに拠点を置いています。この分野では電子商取引が進んでいます。リライアンスジオ(Reliance Jio)、アマゾン、フリップカート(Flipcart。2020年7月にWallmart Indiaを買収しました)が有名です。
テクノロジー企業であるAmazonとFlipkartは、バンガロールに本社を置いています。インドの最強のコングロマリットであるリライアンスインダストリーズ(Reliance Industries)の子会社であるリライアンスジオは、ムンバイを拠点としています。

建設・エンジニアリング
竹中工務店、SMCC CONSTRUCTION INDIA、清水建設、大成建設、鹿島、IHIはデリーまたはグルガオンに拠点を置いています。インドのDLFもグルガオンを拠点としています。インドの建設・エンジニアリング大手のLarsen&Toubroはムンバイに本社を置いています。ムンバイの金融街を海上で結ぶ主要な橋梁プロジェクトであるBandra-Worli SeaLinkの建設に携わったHindustanConstructionもムンバイを拠点としています。 Tata ProjectsとReliance Constructionも本社もムンバイにあります。

まとめ

ご覧のように、ニューデリー、グルガオンおよびムンバイはインドで最も重要なエリアです。多国籍企業本社の場合、ニューデリーやムンバイ、または双方の都市である程度の存在感が絶対に必要です。インドは大きな国なので、地域を北部、西海岸、東海岸、南部に分けて見る必要があります。

工場や製造拠点は、インフラが整備されていて、主要都市から半径200km以内の適切な場所にある町や村である必要があります。理由は、ロジスティクス、意思決定、および本国からの工場運営管理を円滑に進めるためです。プネやハイデラバードが成長していて、南部ではチェンナイがデリー、グルガオン、ムンバイ、バンガロールの代わりになります。

日本企業は日本政府が推進する工業団地への入居を好む傾向がありますが、すべての企業がそこに工場を持つ必要はないと考えます。ビジネス戦略やビジネスパートナーによってはより他にいい選択肢がたくさんあります。

次のブログでは各都市についてもう少し見ていきたいと思います。

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