インド進出成功のカギ

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ムンバイ 2019

進出形態

インド市場への進出やインドの企業とビジネスをするにはさまざまな方法があります。

  • 技術提携
  • ジョイントベンチャー(JV):出資割合は様々です。会社法により株式26%の所有者には議決権があります。
  • M&A
  • 駐在員事務所、支店、プロジェクトに特化した事務所の設立
  • 100%出資の子会社:業種によって外資の直接投資額に制限があります。例えば、自動車産業は100%子会社が、消費者向けブランドでは51%の出資が認められています。制限は外資の直接投資に対する政策の変更に応じて、変わる可能性があります。
  • 有限責任事業組合(LLP, Limited Liability Partnership):外国法人はLLPに出資することが可能です。業績に関する条件なしに100%の出資が認められています。少ない規制で、課税負担を抑えたい場合に有効です。

進出におけるトレンド

中小企業はジョイントベンチャーでロイヤルティーやフィーによる技術移転、または現地営業拠点や駐在員事務所の開設という傾向があります。

M&Aは通常はコスト高で手間がかかります。財務、法務、経営的なデューデリジェンスが大切なのはいうまでもなく、いかに現地化して、「他の国」でビジネスを行うかがより重要となります。これはとても難しく、M&Aを実行する前にどのように取り組むか明確にしておく必要があります。

文具メーカーのコクヨはカムリン(Camlin)を買収し、コクヨ・カムリン(Kokuyo Camlin India)を創設しました。コクヨは買収という方法を選択し、カムリンの株式の51%を取得し、サプライチェーンネットワークと流通網を獲得しました。

これはいい判断だと思います。なぜなら自前でサプライチェーンと流通網を構築するのは費用を必要とし、時間がかかるからです。また、価格競争が激しい市場で自らのブランドを構築するのは、とても難しいからです。いい方法は、新経済特区(SEZ)や日本の政府や自治体の支援施策、インド政府の支援施策(税金のメリット、不動産取得やインフラ構築のサポートなど)を活用して、100%の子会社の工場を設立することです。特に日系企業向けに多くの新経済特区が作られています。一方、インドで一社単独でビジネスをするのは簡単ではありません。労働法、経営に対する考え方、文化が異なるからです。まずは小さく始め、それから成長に向けて一歩一歩進めていく方法がベストです。

成功の鍵

日本の中小企業がインドへ進出する際、市場調査や現地視察を行い、製品やサービスの利用状況、現地の価格設定、消費者の好みなどを調べます。市場調査は選択と集中という点で大切です。さらに、目に見えませんが、もっとも難しいのは経営的な視点でのデューデリジェンスと効果的なコミュニケーションです。

インドに対する心構え

企業の多くは、パートナー候補のもつ技術優位性、現地のコネクション、顧客リストに魅力を感じます。一方、インドは日本人にとっては外国で、行動規範が日本とは違います。ものごとがスムーズにいくことはほとんどなく、先々で障害物にあたるでしょう。一方で、課題に対して解決策を見つけ、うまくいったときには、得るものはとても大きいです。最優先で取り組むべきはインド市場に対して適切な方策をみつけることです。

インド市場は人口13億人以上ですが、ミドルクラスとなるといくつかの層に分かれています。市場のニーズを本当に理解するためには、市場はさらに細かくセグメント分けする必要があります。単に広い意味でミドルクラスととらえると実際の市場の購買力を課題評価することになるでしょう。

OEM、ティア1、ティア2のメーカーやサプライヤーへ販売する場合、その製品のエンドユーザーのニーズをしっかり理解しなければなりません。また、インド人の上流階級や富裕層はよく海外旅行をし、世界を知っています。よって、ニッチな富裕層向けのマーケティングは、適切な製品を、市場への適切な戦略をもって説得力のあるものでなければなりません。

単独でやらないこと

進出は一社単独でできます。でも、すべて独力でやらないほうが賢明で、現実的かもしれません。現地の人や企業に頼って、時間をかけて信頼関係を作りましょう。いい信頼関係を作るのにはある程度時間はかかりますが、役に立ちます。また、長い目で見ると費用対効果が高く、選択と集中についてすばやい意思決定を行うことができるでしょう。

お互いに理解し合う

大切なのは、2つの国の、2つの企業、2つの市場が一緒になるとき、完全にはウィンウィンにはならない、と理解することです。共通のゴールに対する長期的なビジョンを共有し、明瞭なコミュニケーション、文化に対する理解、現地化、適応力、柔軟性そしてお互いに譲り合うこと。これらは成功に不可欠です。変化することを恐れず、柔軟に、ゆく先々で適応していくことが必要になるでしょう。

コミュニケーション方法の違い

例えば、日本人は勤勉さや謙虚さを示すとき、次のような表現をすることがあります。

「できると思います」

「だと思います」

「確認します」

これらは一般的な回答を求めているであろう簡単な質問に対してなされます。そして技術チームは日本の本社に戻ってしまいます。すべてにおいて確認が必要とされます。実体験に関してもです。顔をあわせてのミーティングは信頼を構築する機会です。目安や事例について意見を述べることを恐れてはいけません。

例えば、インドの見込み客が、道具の寿命や部材がどのようにヘタったり、毀損したりするか、と尋ねるとします。これまでの経験からこのことについて答えることができます。あるいは理想的な条件の工場で、正しく使用し、メンテナンスした場合と断った上で、その目安を答えることができます。日本企業には「現地の工場の状況と使用状況によるので、答えることができない、」と回答するところがあります。しかし、事例を紹介し、目安を伝え、「こんな感じです。でも、日本に戻って確認し、具体的な詳細は後日ご連絡します」と言う方がいいでしょう。インド人はとても学問に関心を持っていて、たくさんの質問をする傾向があります。

ドイツやスイスの精密機械メーカーと比べて日本企業のパンフレットや販売資料、ウェブサイトは情報が十分でなく、外国企業に対して効果的に製品を販売するのに適していないとインド人の多くは不満に思っています。

「インドのことはわかりませんが、日本では・・・。」

このような回答すると自信の無さや弱い態度とみなされます。インド人はもっと直接的にコミュニケーションをします。よって、インド人とのミーティングには十分に準備することが必要です。ただの認識の問題かもしれませんが、世界を基準で見た場合、日本企業の意思決定は遅く、保守的で、前時代的とさえと思われています。一方、全体的には、インドは日本人、日本の技術や製造業の優位性については尊敬の念をもって、高く評価しています。また、日本とインドとの間には戦争の歴史はなく、政治的な問題もありません。だから、ビジネスではよい経営を心がけることにより問題を克服することができるのです。

インド人が100%と言うとき、日本企業の多くはそのコミットレベルについてあまり信用していないのも事実です。インド人はときに大げさに約束し、結果、期待以下だったりします。でも、インド人やインドに関わるなら、意識を変えることも必要です。どうして平均的なインド人がそのように自信過剰で約束過剰なのか。それが文化で、締切のプレッシャーがあったり、インドで物ごとを終わらせるの必要だからなのです。インド人はコミットしないのではなく、インドではそのようにコミュニケーションするということなのです。インドは人口が多く、成功や前進することへのプレッシャーが強く、競争が激しいです。すべてのことに責任に対して、コミュニケーションし、積極的にフォローアップを行い、お互いの信頼と理解を育みましょう。

インド人をより理解することはよりよく効果的な意思決定につながります。それができれば、目に見えない時間とコストを大きく削減することができます。