インドビジネスのヒント

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インド投資成功のカギ

進出形態

インド市場への進出やインドの企業とビジネスをするにはさまざまな方法があります。

  • 技術提携
  • ジョイントベンチャー(JV):出資割合は様々です。会社法により株式26%の所有者には議決権があります。
  • M&A
  • 駐在員事務所、支店、プロジェクトに特化した事務所の設立
  • 100%出資の子会社:設立規制により業種によって直接投資額に制限があります。例えば、自動車産業は100%子会社が認められていますが、デジタル、メディア、防衛産業では26%までしか認められていません
  • 有限責任事業組合(LLP, Limited Liability Partnership):外国法人はLLPに出資することが可能です。業績に関する条件なしに100%の出資が認められています。少ない規制で、課税負担を抑えたい場合に有効です。

進出におけるトレンド

中小企業はジョイントベンチャーでロイヤルティーやフィーによる技術移転、または現地営業拠点や駐在員事務所の開設という傾向があります。

M&Aは通常はコスト高で手間がかかります。財務、法務、経営的なデューデリジェンスが大切なのはいうまでもなく、いかに現地化して、「他の国」でビジネスを行うかがより重要となります。これはとても難しく、M&Aを実行する前にどのように取り組むか明確にしておく必要があります。

文具メーカーのコクヨはカムリン(Camlin)を買収し、コクヨ・カムリン(Kokuyo Camlin India)を創設しました。コクヨは買収という方法を選択し、カムリンの株式の51%を取得し、サプライチェーンネットワークと流通網を獲得しました。

これはいい判断だと思います。なぜなら自前でサプライチェーンと流通網を構築するのは費用を必要とし、時間がかかるからです。また、価格競争が激しい市場で自らのブランドを構築するのは、とても難しいからです。いい方法は、新経済特区(SEZ)や日本の政府や自治体の支援施策、インド政府の支援施策(税金のメリット、不動産取得やインフラ構築のサポートなど)を活用して、100%の子会社の工場を設立することです。特に日系企業向けに多くの新経済特区が作られています。一方、インドで一社単独でビジネスをするのは簡単ではありません。労働法、経営に対する考え方、文化が異なるからです。まずは小さく始め、それから成長に向けて一歩一歩進めていく方法がベストです。

成功の鍵

日本の中小企業がインドへ進出する際、市場調査や現地視察を行い、製品やサービスの利用状況、現地の価格設定、消費者の好みなどを調べます。市場調査は選択と集中という点で大切です。さらに、目に見えませんが、もっとも難しいのは経営的な視点でのデューデリジェンスと効果的なコミュニケーションです。

インドに対する心構え

企業の多くは、パートナー候補のもつ技術優位性、現地のコネクション、顧客リストに魅力を感じます。一方、インドは日本人にとっては外国で、行動規範が日本とは違います。ものごとがスムーズにいくことはほとんどなく、先々で障害物にあたるでしょう。一方で、課題に対して解決策を見つけ、うまくいったときには、得るものはとても大きいです。最優先で取り組むべきはインド市場に対して適切な方策をみつけることです。

インド市場は人口13億人以上ですが、ミドルクラスとなるといくつかの層に分かれています。市場のニーズを本当に理解するためには、市場はさらに細かくセグメント分けする必要があります。単に広い意味でミドルクラスととらえると実際の市場の購買力を課題評価することになるでしょう。

OEM、ティア1、ティア2のメーカーやサプライヤーへ販売する場合、その製品のエンドユーザーのニーズをしっかり理解しなければなりません。また、インド人の上流階級や富裕層はよく海外旅行をし、世界を知っています。よって、ニッチな富裕層向けのマーケティングは、適切な製品を、市場への適切な戦略をもって説得力のあるものでなければなりません。

単独でやらないこと

進出は一社単独でできます。でも、すべて独力でやらないほうが賢明で、現実的かもしれません。現地の人や企業に頼って、時間をかけて信頼関係を作りましょう。いい信頼関係を作るのにはある程度時間はかかりますが、役に立ちます。また、長い目で見ると費用対効果が高く、選択と集中についてすばやい意思決定を行うことができるでしょう。

お互いに理解し合う

大切なのは、2つの国の、2つの企業、2つの市場が一緒になるとき、ウィンウィンにはならない、と理解することです。共通のゴールに対する長期的なビジョンを共有し、明瞭なコミュニケーション、文化に対する理解、現地化、適応力、柔軟性そしてお互いに譲り合うこと。これらは成功に不可欠です。変化することを恐れず、柔軟に、ゆく先々で適応していくことが必要になるでしょう。

コミュニケーション方法の違い

例えば、日本人は勤勉さや謙虚さを示すとき、次のような表現をすることがあります。

「できると思います」

「だと思います」

「確認します」

これらは一般的な回答を求めているであろう簡単な質問に対してなされます。そして技術チームは日本の本社に戻ってしまいます。すべてにおいて確認が必要とされます。実体験に関してもです。顔をあわせてのミーティングは信頼を構築する機会です。目安や事例について意見を述べることを恐れてはいけません。

例えば、インドの見込み客が、道具の寿命や部材がどのようにヘタったり、毀損したりするか、と尋ねるとします。これまでの経験からこのことについて答えることができます。あるいは理想的な条件の工場で、正しく使用し、メンテナンスした場合と断った上で、その目安を答えることができます。日本企業には「現地の工場の状況と使用状況によるので、答えることができない、」と回答するところがあります。しかし、事例を紹介し、目安を伝え、「こんな感じです。でも、日本に戻って確認し、具体的な詳細は後日ご連絡します」と言う方がいいでしょう。インド人はとても学問に関心を持っていて、たくさんの質問をする傾向があります。

ドイツやスイスの精密機械メーカーと比べて日本企業のパンフレットや販売資料、ウェブサイトは情報が十分でなく、外国企業に対して効果的に製品を販売するのに適していないとインド人の多くは不満に思っています。

「インドのことはわかりませんが、日本では・・・。」

このような回答すると自信の無さや弱い態度とみなされます。インド人はもっと直接的にコミュニケーションをします。よって、インド人とのミーティングには十分に準備することが必要です。ただの認識の問題かもしれませんが、世界を基準で見た場合、日本企業の意思決定は遅く、保守的で、前時代的とさえと思われています。一方、全体的には、インドは日本人、日本の技術や製造業の優位性については尊敬の念をもって、高く評価しています。また、日本とインドとの間には戦争の歴史はなく、政治的な問題もありません。だから、ビジネスではよい経営を心がけることにより問題を克服することができるのです。

インド人が100%と言うとき、日本企業の多くはそのコミットレベルについてあまり信用していないのも事実です。インド人はときに大げさに約束し、結果、期待以下だったりします。でも、インド人やインドに関わるなら、意識を変えることも必要です。どうして平均的なインド人がそのように自信過剰で約束過剰なのか。それが文化で、締切のプレッシャーがあったり、インドで物ごとを終わらせるの必要だからなのです。インド人はコミットしないのではなく、インドではそのようにコミュニケーションするということなのです。インドは人口が多く、成功や前進することへのプレッシャーが強く、競争が激しいです。それらを理解してコミュニケーションし、積極的にフォローアップしましょう。

インド人をより理解することはよりよく効果的な意思決定につながります。それができれば、目に見えない時間とコストを大きく削減することができます。

日本企業の課題

日本企業の傾向

日本企業多くは日系顧客や日本のネットワークを結びつきが非常に強く、それに依存する傾向が強いです。長年、日本や海外の多くの国で日系企業同士で協業しています。うまくいっているケースもある一方で、非日系企業と取引する際、こうした相互依存が裏目に出る場合もあります。「日本株式会社」「日系企業」の以外ではビジネスの仕組みが非常に異なるからです。

日系企業のサプライヤーとしてインドに進出するのは安全な方法です。日系企業同士の関係は日本株式会社としての成功を確約します。それでも現地の価格設定や需要にいかに応じるかを考えることは大切です。日系OEMだけに商品を販売するのは偏った施策で、依存度が増えます。この施策は長期的なビジョンに関係し、施策の中のひとつであるべきです。

日系のOEMでさえ現地市場価格にあわせるため、価格に対して強烈なプレッシャーをかけてきます。また、部品を供給可能なちょうどいい現地パートナーを見つけた場合、日系企業はその現地パートナーの部品を使用したり、どこかから輸入してくるかもしれません。コストをコントロールし、時間をかけてコストを削減するために、企業は「カイゼン」や「ジュガード(Jugaad)」を使います。ジュガードとはインドにおけるマネジメントの方法論で、インドの企業が価格に敏感なマーケットで仕事をすすめるために限られたリソースを活用して改善や問題解決をする革新的な方法です。遅かれ早かれ企業は現地のパートナー、現地の顧客を見つける必要があります。

インド市場の特徴

インドは極めて価格に敏感な市場です。製品価格が高い場合は、それに応じた計画と戦略が必要です。なぜその価格を設定していいか、その価格に対してマーケットのニーズやどのように製品を浸透させるか、競合の価格はいくらかを知る必要があります。日本はアジアのブランドはインドでは同じようには認知されていません。よって、インド市場で製品について啓蒙する必要があるかもしれません。

インド市場には競合も多いです。世界的なブランドや現地のブランドがひしめき合っています。販売チャネルと流通網を適切に選択し、積極的に競争をする必要があります。短期的なアプローチは失敗することが多いので、長期的な視点を持つことが重要です。

インドでビジネスをする日本人が一般的に感じること

以下はインドでビジネスをする日本人から私たちが聞いたポイントです。

  • インフレと人件費の上昇インフラがまだ弱い(改善と発展はしているが)
  • いくつかの製品で原材料や部品の現地調達が簡単ではない
  • 大都市では状況は改善しているものの、インドではまだ停電があり電力不足
  • インド市場は競争が激しく価格に敏感
  • 国別のランキングは急速にアップしているが、ビジネスのしやすさという点ではまだ改善が必要
  • 透明性は改善され、政府は汚職の摘発に努めている
  • 職業スキルや身につけている技術スキルのレベルはまだ低い
  • スキルレベルを引き上げるために多くの研修プログラムが必要。職業スキルは製造やオペレーションのようなセクターは多くの産業で重要

事例から学ぶ

大規模な事例

第一三共製薬とランバクシー(Ranbaxy)のケースは日本企業のインドでの投資において、最大の失敗例といえます。2008年6月、第一三共はインドの後発医薬品大手のランバクシーに合計約4884億円(US$4.6B)投資。しかし買収直後、ランバクシーの工場はアメリカFDAから虚偽のデータの提出のかどで調査対象となり、製品は輸入禁止措置となります。ランバクシーは必要な治験や保護手段や品質管理なしに後発医薬品を開発していたことが、内部告発により明らかになりました。

第一三共がランバクシーを買収した理由は有名な薬の後発医薬品が大規模で利益の見込める事業だからです。安く製造できて、利益率がとてもいい。当時アメリカの後発医薬品の40%はインドから輸入されていました。加えて、アメリカでのブランド薬と後発医薬品の薬の有効成分の80%はインドか中国からの輸入でした。そのため第一三共にとってランバクシーは事業を多様化させる大きなチャンスと映ったのです。

報道によると、ランバクシーはインドのサンファーマ(Sun Pharma)に吸収され、第一三共はサンファーマの株式の8.9%を取得。のちに3960億円(USD3.6B)で売却しました。第一三共は財務的には一連の取引でサンクコストのほとんどを回収しました。しかし第一三共は費用を事業の成長にうまく使うことができず、ほとんど回収したものの、時間と人的資源と機会費用を失いました。

第一三共がランバクシーに投資をしたときは新興市場に対する関心が高かったときです。第一三共は取引を急ぐあまり、多くの重要で肝心な情報を見過ごしました。情報のいくつかは隠れていたりはっきりしていないにもかかわらず、第一三共はディーデリジェンスを次の点で適切に行わなかったと考えます。

  • 繰り返し工場を視察し、有効成分や大きな規模で後発医薬品をテストすること
  • 頻繁にかつ詳細にアメリカの顧客レポートについてFDAとコニュニケーションをすること

第一三共には明確な目的があったようには思えません。また結果論として、何か良くないと思える多くの状況を見過ごしました。この取引は経営的な視点でのデューデリジェンスにおける失敗と言えます。さらに第一三共とランバクシーの争議は責任の所在という点で混乱を招き、これが事態を悪化させ、失敗を長引かせました。

第一三共は時間をかけて経営的な視点で評価を行い、後発医薬品について生物学的同等性試験と詳細な法的チェックを行っていれば、この失敗を回避できたかもしれません。

一般的な見方

戦略を立てるのに時間をかけすぎて実行に移すタイミングを失う事例が見受けられます。近年、日本企業は中国やインドネシアやその他の国へ注力し、その日系顧客対応で忙しくしていました。でも、競合相手と市場は待ってくれません。機会を創造するという意志をもって取り組み推進するのは自分のためなのです。

個々の企業にとっては市場は限定的な場合も

インド市場はその人口を見ると大きいかもしれません。でも、多くの日本の製品にとって実際の市場規模はそれぞれのセグメントによります。例えば、チョコレートのロイスや洋菓子のヨックモックはインドに進出していますが、ターゲットは伸びているニッチな上流層のマーケットです。無印良品もインドに進出していて、現地調達をしてからも、テストマーケティングをたくさん行っています。商品価格はハイアッパーミドル層に向けられたものです。その結果、ほどんどのインド人は無印の商品を買うことはできずに、現地の他の製品をさがします。

よって、市場規模、価格、市場の選定、適切なマーケティング戦略をしっかり行う必要があります。この分野にある程度の費用をかけて、ネットワークを活用しマーケットにアプローチする戦略を練りましょう。一度進出すると決めたら、より深く広い知識をもって、速やかに事業を立ち上げるべきです。

なぜマルチ・スズキ(Maruti Suzuki)は成功したか?

スズキがインドに進出したのは早く、乗用車市場の初期という絶好のタイミングでした。ヒンダスタン・モーター社(Hindustan Motors)のアンバサダー(Ambassador)やフィアットのライセンスの元で作られたプレミア・パドミニ(Premier Padmini)などの車種しかない時代でした。それ以外は自転車、人力車、スクーター、オートバイ、トラックやバスでした。もちろん牛もたくさんいました。乗用車は富裕層向けで外国車はインド市場には本格的には入って来ていませんでした。

はじまりは1980年代初頭。ネルー・ガンジーファミリー(Nehru Gandhi family)のインディラ・ガンジー(Indira Gandhi)の息子のサンジェイ・ガンジー(Sanjay Gandhi)の肝いりのプロジェクトとして、マルチ・スズキは優遇されます。大衆車を開発するために、希少な資本財の使用、製造制限の緩和など国有化のための現地のリソースに正式にアクセスできる優先企業となりました。さらに競争から保護されました。市場が外資に開放されるときまでにマルチ・スズキはインドでの礎を築きました。

スズキは小型車(軽自動車)市場に注力しました。とりわけリーズナブルな価格の車種を人々が買いやすいようにと市場に投入。部品はインドの価格を抑え、国内どこでも簡単に手に入るようにしました。そして現地企業やパートナーとも上手に協業しました。事実、スズキは長年に渡り現地でモノを育てました。これが成功のカギで、パートナー企業は拡大成長して、大きなグローバルな自動車部品サプライヤーとなりました。

その工場はとても稼働率が高く、発展中のインドの大規模な市場ニーズを満たすために最適化されました。

スズキは2013年にマルチ・スズキの持ち分を56%引き上げました。インドはスズキにとって最も成功した市場ととらえることができます。また、今日、インドでとても大きなシェアのある最も認知されているブランドの一つです。

スズキについで、韓国のヒュンダイ(Hyundai,現代自動車)もまたマス向け小型車を生産し、上手な価格設定ととても効果的なマーケティング戦略で展開しました。ヒュンダイの車種は重要な機能は全部込みで、基本価格に含まれるように設定しています。これはインド人が必要な機能はオプションでなく、全部込みを求めるからです。ヒュンダイはインド人消費者にとっては信頼できるブランドで、デザインも広く受け入れられています。今日、インドではヒュンダイはスズキについで大きなシェアをもっており、インドはまたヒュンダイにとって生産と輸出を行う大きな市場でもあります。

スズキはコネクテッドカーと電子化技術の点で弱く、トヨタがインドにおけるスズキの技術パートナーとなるでしょう。トヨタはインドで大きなシェアを占め、スズキがインドの自動車の未来へ向けて移行するのに寄与するでしょう。

現地での問題解決方法(コスト削減について)

事例

日系機械製造A社は、重要で精密なコンポーネントは日本で組み立て、基本部分の製品だけをインドの顧客に販売します。備品のデザインや備品や治具の製造はバンガロール(Bangalore)にある現地企業が、オートメーションはプネ(Pune)の現地企業が担当します。完成品引き渡しはインドで行われます。双方の国の強みを活かし、上手にコストを管理しています。こういったことが可能です。

ドイツ系機械商社B社は、重要な精密コンポーネントはドイツから輸入し、それ以外はインドで調達します。インドで調達するのは手に入る日系のコンポーネントであったり電子部品であったりします。そしてインドで完成品に組み立てます。また、試験や試運転、維持管理はすべてインドで行われます。これにより技術者の宿泊費や出張費、マーケティングに関する長期的な費用を大幅に削減できます。

日系日用品メーカーC社は、中国、インドネシア、タイ、ベトナムで生産したものをインドのパートナーを通して販売し、コスト削減を図っています。原材料の費用は東南アジアや中国がリーズナブルです。しかしこの戦略では為替変動や政治的なリスクがともないます。経済政策は変わるかもしれませんが、インドでの現地生産の立ち上げる前の第一歩としては有効です。

現地のマーケットのニーズを理解し、インドやその近隣諸国向けの仕様の製品を作る。これは企業が現地でブランドを確立させるための小規模で、具体的なアプローチです。また一つか二つの小規模なプロジェクトから始めることによってノウハウを守り、徐々に大きくしていく方法でもあります。現地仕様はインドのその業界や市場の専門家との会話、あるいは市場調査を通して開発することができます。研究開発は日本で行い、設計図が承認されれば、インド市場向け仕様の製品はインドでその一部が製造され、インドですべて組み立てすることができます。

これまでに述べた個々の方法論では、信頼できるパートナーと長期的な視点でのアプローチが必要となります。しかし、コストメリットをエンドユーザーに訴求すれば、現地のマーケットで勝つことができます。そしてそれは現地のし上で自社のブランドの市場価値の改善につながります。

大切なのは、インドを単にインド単独市場のみと捉えるのではなく、「インド製(Make in India)」という政府の新しい政策とイニシアチブのもと、中東、アフリカ、スリランカ、アメリカやヨーロッパへの輸出拠点として活用すべきです。インドの人材、才能のある人々、民主的な利点を活かし、インド市場の先にある市場にも焦点を当てましょう。広い視点でのアプローチをとることにより、さらなるリスクヘッジができ、よりバランスに富んだ戦略を推進することができます。

例えば、ダイキンはインドでエアコンのユニットを作っています。そしてインド市場で付加価値をつけ、中東やアフリカ市場を開拓し、その市場向けにも開発、生産を行っています。これは「インド製プラス戦略」としてリスクマネジメントと企業のリソースの活用の好例といえます。

インドで成功するチャンスを増やす8つの重要なポイント

  • 自らの強みを見つけ出す
  • 競合相手を知る(外国企業およ現地企業)
  • 顧客が何を求めるかをしっかりとらえる
  • 市場進出のための戦略を練る
  • 現地の良いパートナーを活用する(信頼を構築する)
  • パートナーについて法務、財務のデューデリジェンスを行う。さらに真にパートナー、本当のヒトを知るために経営的な視点でのデューデリジェンスを行う
  • 現地で解決策を生み出し、現地化を行い、現地にあった製品を製造する
  • そして、現地化し、インドをグローバル化の拠点と捉え、インドの人材、若者、スキルを活用する

インドは若い生産年齢人口も多く、教育可能な才能のある技術者がいて、巨大な市場です。また、インドを製造のハブにするという国のトップのビジョンもあります。

現地で解決策を生み出す努力をしている日本企業は極めて少ないのが現状です。多くは、日系企業のみ相手にしているか、インドという価格に敏感な成長している市場にとって極めて高額な部品や製品を供給しています。

日本企業は高い技術と資本力があるにも関わらず、ノウハウが盗まれる心配をしたり、騙されるかもしれないと考えて、インドで本当に戦うための現地化を行っていません。心配するのは理解できるのですが、リスクヘッジをしたり、現地のリソースを活用することにより日本側の権利を守ることができるのです。

最後になりますが、コミュニケーションや特に英語を恐れていてはインドでのプロジェクトに最も適した人材を雇用することはできません。単に英語が話せることができても、ビジネスを推進するための効果的なコミュニケーション能力があるということではありません。英語は単なるコミュニケーションの道具にすぎず、ビジネスではないということを覚えておいてください。